ローマの法律
(最終更新1999.8.8)
●十二表法(前449年成立)
 ローマ初の成文法で、10人のメンバーからなる裁定委員会(十人委員会)によって十二の表に記され、公示された。これによって法は貴族によって秘密裏に司られるものではなく、誰でも知ることができるものとなり、法的安定性が増大することとなる。

●カヌレウス法(前445年成立)
 平民と貴族の結婚を認める法律。

●リキニウス法(前367年成立)
 6人の護民官権限軍事担当官制度を2人の執政官制度に戻す。
すべての政務官職を平民(すなわち、ローマ市民権保持者)に開放。

●元老院の人事に関するオウィニウス法(前318/312年成立)
 元老院名簿の補充権を監察官に与える法律。

●提訴に関するウァレリウス法(前300年成立)
 死刑や重い罰金刑(いわゆる頭首刑(ポエナ・カピターリス))に処せられるべき犯罪の裁判権を、政務官から民会へ移す法律(民会裁判、後には一定数の陪審員からなる法廷も)。

●ホルテンシウス法(前287年成立)
 平民集会での可決事項はそのまま国の法になることを決めた。これで、元老院で否決しても、これを覆すことができた。

●元老院議員の船に関するクラウディウス法(前218年成立)
 護民官クィントゥス・クラウディウス提出の法案で、民会で可決。300アンフォラ(約8000リットル)以上の荷を積める船舶の保有を元老院議員及びその子弟に禁止するもので、大規模な交易に従事することを事実上禁止した法律。結果として、元老院議員は、投資の対象を土地に特化することになり、大量の奴隷を使役する大土地所有農業を発達させることになった。一方、元老院議員のグループとは別に交易を担当する身分(騎士身分)を発達させることとなった。

●政務官の年齢(年限)要件に関するウィーリウス法(前180年成立)
 政務官就任資格に関する初めての法律で、必要最低年齢を定めたもの。

●民会における選挙に際して秘密投票制度を採用する(投票札(タベラ)に関する)ガビニウス法(前139年成立)
 のちに成立することとなる三法律によって、秘密投票制度が確立する。

●センプローニウス農地法(レックス・アグラーリア・センプローニア)(前133年;廃案)
 前133年護民官ティベリウス・グラックス提出の法案で、中小農家の救済、保護育成を目的とし、対象は国有地(私有地は対象外)。元老院側の激しい反発のため廃案。
(内容)
(1)国有地借用の上限を500ユゲルム(125ヘクタール)とする。またこのほかに、息子の名義で、息子1人につき250ユゲルムまでの借用を認める。ただし、一家全体の借地が、1000ユゲルムを越えることは許されない。牧畜用の家畜の数も、600頭を上限とする。
(2)国有地の借地権には相続の権利は認めるが、他社への譲渡は認めない。
(3)1000ユゲルム以上の国有地を借用している者は、速やかに国家へ返還し、国家は返済地の広さに応じて補償金を支払う。
(4)(3)を行った後で、国家は常設の委員会を設け、希望する農民に借用農地の再分配を実施する。

●小麦法(前123年成立)
 前123年護民官ガイウス・グラックス提出の法案。国家が一定量の小麦を買い上げ、市価より安い価格(半額程度)で首都ローマ在住の貧民に配給。戸主へは月5モディウス(45リットル)を、1モディウスにつき6.3アッセで買う権利を与える。のちにスッラによって廃止される。

●軍隊法(前123年成立)
 前123年護民官ガイウス・グラックス提出の法案。17歳未満の男子の徴兵の禁止。国家の支給でも経費は給料から差し引かれていた武装や武器、または兵役中の食料などの軍務に必要な物資のすべてを国家の負担とする。

●ユリウス市民権法(レックス・ユリア・デ・チヴィターテ)(前90年成立)
 前90年執政官ルキウス・ユリウス・カエサル提出の法案。ルビコン河以南のイタリア人すべてにローマ市民権を付与。

●ユリウス農地法(前59年成立)
 執政官ガイウス・ユリウス・カエサル提出の法案。前133年に提出廃案となったセンプローニウス農地法の補正案に近かった。
(内容)
(1)国有地借用の上限は、戸主は500ユゲルム(125ヘクタール)。このほかに息子の名義で、息子一人につき250ユゲルム。ただし、一家全体の借地は1000ユゲルムを越えることは許されない。
(2)1000ユゲルム以上の国有地を借用している者は、速やかに国家へ返還し、国家は返済地の広さに応じて補償金を支払う(カンパーニャ地方は除外)。
(3)(2)を行った後で、国家は常設の委員会を設け、希望する農民に借用農地の再分配を実施する
(4)国有地の借地権には、相続の権利を認めるが、他者への譲渡権は20年間認めない。
(5)国有地の借用を申請できるのは、ポンペイウスに従って5年間の兵役を果たしたものの他に、3人の子を持つ無産者(プロレターリ)とする。
(6)(2)に関する補償金と、新たに配分される土地への先行投資のために要する費用の財源は、ポンペイウスがオリエントから帰国した時点で国庫に納入した、2億セステルティウスを充てること。
(7)(2)の補償金の額を決めるのは、監察官の権限とする。
(8)(3)にある委員会は、20名の委員で構成され、その委員には、提案者は参加しない。

●ユリウス属州税徴収請負業者法修正案(前59年成立)
 執政官ガイウス・ユリウス・カエサル提出の法案。徴税予想額の1/3をあらかじめ「プブリカヌス」から国庫へ納めさせることを廃止した。
(注)当時、属州からの税徴収方法は、「プブリカヌス」と呼ばれた私営業者が行い、国家は、入札によって業者を決めていた。そのため、入札額がそのままその属州の徴税予想額となった。

●ポンペイウス政務官法(前52年成立)
 執政官大ポンペイウス提出の法案で、政務官立候補者は、首都で本人が立候補届けをおこなわなければならなず、代理人による届けを認めないこととした。ただし、カエサルは除外とする補正条項が附された。

●ポンペイウス属州総督法(前52年成立)
 執政官大ポンペイウス提出の法案で、属州総督になる権利を持つ前執政官及び、前法務官とも、実際の赴任は、執政官及び法務官を勤めた年から5年をおいた後でなければならないとした。

●ユリウス姦通罪・渉外交渉罪法(前18年成立、前15年実施)
 アウグストゥス提出の法案。姦通罪が公的な犯罪と規定され、誰でも告発することが可能となった。また、姦通を知りながらその事実を隠したり、または知った後もなにも手を打たなかった夫や実父も、「売春幇助罪」に問われる。
 そして、女奴隷や娼婦をのぞいた他の女との正式婚姻関係外のあらゆる性的関係も、公的な犯罪として規定された。
 罰則として、不倫関係を結んだのが有夫の女の場合、資産の1/3を没収された上、孤島に終身追放され、ローマ市民権保有者との婚姻も不可とされた。なお、逆に夫の方が不倫を働いた場合は、不問にされた。

●ユリウス正式婚姻法(前18年成立、前15年実施)
 アウグストゥス提出の法案で、元老院議員階級と騎士階級に属する人が対象。男は25歳〜60歳、女は20歳〜50歳の圏内にある限り、結婚していなければいろいろな不利が課されるという法律。
(男性の場合)
 第一子の誕生で初めて、法定相続人以外にも遺産を相続させることができる。
 また、独身男性は以下のような公生活上の不利が課される。
1.市民集会での投票で決まる政務官職は、獲得票数が同じならば、独身者より既婚者、既婚者の中でも子を持つ者、子を持つ者の中でも数が多い者、という順で優先されるように変わった。
2.元老院での議席取得も、資格・能力ともが同一線上にある者ならば、上の順位で優先される。
3.元老院属州に赴任する総督の人選も、上の順位が準用された。
4.各政務官職間には休職期間が設定されていたが、子1人につき1年間の休職期間の短縮が決まり、子を多く持つ者が、国家の要職を次々に歴任することができた。

(女性の場合)
(1)未亡人の場合でも、子がいなければ、1年以内に再婚しなければ独身並とされる。
(2)子を持たない独身女性は、50歳を越えると、いかなる相続権も認められず、また5万セステルティウス以上の資産を有する権利を失い、誰かに譲渡しなければならなかった。
(3)2万セステルティウス以上の資産を持つ独身女性には、年齢に関わらず、結婚するまでの毎年、収入の1%を国家に納めなければならなかった。なお、第三子の誕生で初めて税免除された。
(4)3人の子をなした女性は、実家の父親に公使権のある「家父長権」から解放され、自らの資産を自由に遺贈することができ、他人からの遺贈も自由であるといった、経済上の男女平等が保証された。

また、奨励されない結婚として、次の二例が明記された。
(1)規定圏外の年齢の者の間での結婚。
 法律で禁止されてはいなかったが、夫と妻の双方が規定の年齢枠外にある場合、また、夫と妻のどちらか一方が規定の年齢枠外の場合、夫の死後の遺産相続権は妻には認められず、没収された遺産は国庫に納められるという税制面の不利があった。
(2)いかがわしい職業の者との結婚。
 法律で禁止されてはいなかったが、正式の婚姻とは認められず、独身と同じ扱いをされた。

 離婚については、公表が義務づけられ、この公表も7人のローマ市民権保持者の承認なしには受理はされない。義務を怠った場合、罰則が科された。そして、離婚の可否は、元老院議員を長とした委員会での採決を必要とした。

●パピウス・ポッペウス法(後9年成立)
 執政官パピウスとポッペウス提出の法案。上記ユリウス二法の修正法である。
1.結婚していても子に恵まれなかった夫にも妻にも、近親者でない限り相続権は認められていなかったが、後天的な血縁者という理由で、認められるよう改められた。ただし、子がいたらならば相続できた額の1/2とされた。
2.独身女性には遺贈する権利も遺贈される権利もなかったが、再婚すれば直ちにその権利を回復できると改めた。
3.1年以内に再婚しなかった未亡人は、独身女性と同等と見なされていたが、再婚すれば、相続の権利を回復し、第1子を設けることで、1%税を直ちに免除された。


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(参考文献)
「ローマ人の物語」塩野七生著:新潮社:1992
「ローマの共和政」J.ブライケン著、村上淳一、石井紫郎共訳:山川出版社:1984