チャーチル著『第二次大戦回顧録』より
(2008.4.1作成)

このオーストリア・ハンガリー帝国の解体について、第二次世界大戦時のイギリス首相で有名なチャーチルはその著『第二次大戦回顧録』で、許しがたい愚行だとして、ヴェルサイユ条約の失敗のうち第二にあげている。

これはその一節。

「第二の重大な悲劇はサンジェルマン条約とトリアノン条約によるオーストリア=ハンガリー帝国の完全なる解体だ。数世紀にわたって、この神聖ローマ帝国の残滓である帝国は多くの民族に、商業と軍事上の利点をともなって、共通の生命を与えてきた。これらの民族は、ドイツとロシアの圧力に直面し、孤立してたつ力も潜在力もなかった。

これらの民族は連邦制からも帝国制からも離脱することを願い、この欲望が自由主義的政策だと思い込んだ。

南東ヨーロッパのバルカン化は進み、プロイセンまたはドイツ帝国の相対的勢力拡大がその結末だった。ドイツ帝国は疲弊し戦争により傷つけられたにせよ、統一されており、ヨーロッパのその部分では圧倒的だった。

ハプスブルグ帝国は、その構成するいかなる地方にも民族にも古代詩人や神学者が「厭うべきもの」とした拷問など加えていない。

長い期間わたって維持された文化と伝統の故郷、道路・水路・鉄道の中心であった高貴なる首都ウィーンは荒涼としたまま放置された。それはあたかも、住民の大半が去ってしまった貧困地区の商業中心地であるかのようだった」。
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